レーシックと老眼|誤解されやすい点と治療選択の正しい考え方


「レーシックで老眼は治せるのだろうか」と心配する方は少なくありません。老眼は誰にでも訪れる加齢による変化であり、レーシックで根本的な改善はできません。ただし、多焦点眼内レンズやIPCLなど、別の治療法によって生活の質を高められる選択肢があります。
本記事では、老眼が起こる仕組みやレーシックで改善できない理由、他の治療法との違いを整理し、後悔しないための判断材料をご紹介します。専門的な内容もできるだけ理解しやすいように解説し、安心して治療を検討できるようお手伝いしますので、ぜひ最後までご覧ください。
老眼とは?

老眼は40歳を過ぎる頃から多くの人にあらわれる、ごく自然な目の変化です。ピント調整を担う水晶体や筋肉の働きの衰えで、近くの文字や細かいものが見えにくくなっていきます。
老眼がなぜ起こるのかや、日常生活で感じやすい症状について分かりやすくお伝えします。
老眼の原因とピント調整の仕組み
老眼は病気ではなく、誰にでも年齢とともに起こる自然な変化です。主な原因は、目の中のレンズにあたる「水晶体」と、その厚みを変えてピントを合わせる「毛様体筋」が加齢によって変化するためです。
水晶体は年齢とともに少しずつ硬くなり、厚みを自由に変えられなくなります。その結果、ピントを合わせる力が弱まり、近くのものが見えにくくなります。
また、白内障も加齢と関係しますが、こちらは水晶体が濁って視力が下がる病気です。老眼は病気ではなく自然な現象である点が大きな違いです。
老眼が始まる年齢と主な症状
老眼は多くの人が40代半ばごろから少しずつ自覚し始めます。
代表的な症状には、
- 近くの文字がかすんで見える
- 本やスマートフォンを少し離して見るようになる
- 夕方以降や長時間作業のあとに目が疲れやすくなる
といったものです。特にパソコンやスマートフォンを使う時間が長いと、違和感を早く感じやすい傾向があります。
こうした変化は生活の質に影響しますが、老眼は自然な加齢現象です。自分に合った矯正方法を知ることで、日常の負担を減らし快適に過ごすことができます。
レーシックで老眼は治せる?

レーシックは視力回復の手術としてよく知られていますが、「老眼にも効果があるのだろうか」と疑問に感じる方も多いでしょう。
レーシックで老眼が治るのかという不安に触れつつ、手術の基本的な仕組みや適応範囲、おさえておくべきメリットとリスクについて整理していきます。
レーシックで老眼は治せない
レーシックは、角膜をレーザーで削って光の通り道を整えることで、近視・遠視・乱視を矯正する手術です。
一方、老眼は目の中のレンズ(水晶体)が年齢とともに固くなり、ピントを合わせる力が弱まることで起こります。原因も治療の対象となる部位も角膜とは異なるため、レーシックで老眼そのものを改善することはできません。
また、角膜を削る手術は一度行うと元に戻せないため、老眼対策としてレーシックを受けるのは適切ではないと理解しておきましょう。
レーシックの基本と適応範囲
レーシックは主に20〜50歳前後の方で、角膜に十分な厚みがあり、形も大きくゆがんでいない場合に受けられます。近視・遠視・乱視の改善を目的に行われる手術で、短時間で視力の回復が見込める点が特徴です。
ただし、老眼は原因が異なります。
- 近視・遠視・乱視は、光の通り道である角膜を調整すれば改善できる
- 老眼は、ピントを合わせるレンズ(水晶体)が年齢とともに固くなるのが原因なので、角膜をいじっても意味がない
このため、レーシックでは老眼は治せません。老眼世代の方がレーシックを希望するケースもありますが、目的や症状にあわせて他の治療法を選ぶのが現実的です。
レーシックで得られるメリット
レーシックは老眼そのものを治すことはできませんが、近視や乱視が強い方にとっては裸眼で過ごせるようになるのが大きなメリットです。
術後の回復も比較的早く、日常生活へスムーズに戻れる点も特長です。さらに、費用が他の屈折矯正手術より抑えられる傾向があるのも魅力でしょう。
老眼世代の場合でも、「近視の度数を軽くして、老眼鏡だけで済む生活にしたい」という目的でレーシックを選ぶ方もいます。老眼は残るものの、近視が改善されることで遠くは裸眼で見やすくなり、生活が快適になるケースもあります。
レーシックのリスクとデメリット
レーシックは長い歴史と多くの実績を持つ手術ですが、まったくリスクがないわけではありません。よくみられるのは、夜間に光がにじむ「ハロー」やまぶしく感じる「グレア」、目が乾きやすくなるドライアイなどの症状です。
さらに角膜を削るため、将来白内障の手術を受ける際に制約が生じる可能性があります。特に老眼世代では、白内障や老眼が同時に進行することも多いため、将来の治療計画を含めて考える必要があります。
手術を検討する際は適応検査で自分の目の状態を確かめ、リスクを理解して判断しましょう。
レーシックについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。


老眼の主な治療法

老眼は誰にでも起こる自然な加齢現象であり、完全に防ぐことはできません。
ただし、近年は治療の選択肢が広がっており、生活の質を高める方法も増えています。候補としてあげられる多焦点眼内レンズやIPCLといった代表的な手術法について、その仕組みや特徴、知っておきたい注意点を整理します。
多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズは、白内障手術のときに濁った水晶体を取り除き、その代わりに入れる人工のレンズです。遠くにも近くにもピントを合わせられるように設計されているため、老眼と白内障を同時に改善できる可能性があります。
従来の単焦点レンズでは「遠くは見えるけれど近くは眼鏡が必要」といった制約がありました。しかし、多焦点レンズは遠くから中間、近くといった複数の視野にピントが合うように設計されているレンズです。まったく眼鏡が不要になるわけではありませんが、術後は日常生活の多くの場面で、裸眼でも見える範囲が広がるため、眼鏡の使用頻度を減らせます。眼鏡の使用を減らし、できるだけ裸眼で生活したい人に選ばれやすい治療法です。
一方で、光がにじんで見えたり、暗い場所で見えにくくなったりするなど、見え方の質に影響が出ることもあります。メリットとデメリットの両方を理解したうえで検討することが大切です。
多焦点眼内レンズのメリット・デメリット
多焦点眼内レンズの最大のメリットは、眼鏡や老眼鏡に頼る場面を減らし、裸眼で過ごせる時間が増えることです。遠くから近くまで幅広い距離にピントが合いやすくなるため、日常生活の快適さにつながります。
一方で、光を分散させる仕組みのため、夜間に光がにじんで見える「ハロー」や、まぶしく感じる「グレア」などの症状が出やすいというデメリットもあります。多くの場合は自由診療となるため、保険診療に比べて費用負担が大きくなる傾向です。
ただし、最近では「ハロー」や「グレア」などの症状をおさえたレンズも登場しており、種類も豊富になっています。それぞれの多焦点眼内レンズには特徴があり、メリット・デメリットも異なります。気になる方はこうした特徴を理解したうえで、自分のライフスタイルに合うレンズはどのような種類かクリニックで相談するとよいでしょう。
IPCL
IPCLは、「後房型の有水晶体眼内レンズ」と呼ばれるタイプのレンズを目の中に入れて視力を矯正する方法です。
角膜を削らずに済むのが大きな特長で、必要に応じて将来的に取り外すことも可能です。従来のICLと似た仕組みですが、新しい選択肢として注目されています。
さらに、老眼矯正を目的とした多焦点タイプのIPCLも開発されており、ヨーロッパではすでに認可されています。日本でも一部の度数(-3.0D〜-20.0D)で承認されていますが、導入から日も浅いため症例数も限られています。
治療を検討する際は、最新の承認状況やリスクについて医師から十分な説明を受けたうえで判断することが大切です。
多焦点眼内レンズとIPCLの違い
項目 | 多焦点眼内レンズ | IPCL(多焦点タイプ含む) |
---|---|---|
見え方 | 遠くも近くもある程度見やすい。ただしレンズの種類によっては、夜間に光がにじむ「ハロー」やまぶしさ「グレア」を感じることがある | 自分の水晶体を残したままレンズを入れるため、角膜を削らずに矯正できる多焦点タイプなら遠近の見え方をサポート可能(※多焦点タイプは日本未承認) |
対象となる人 | 白内障がある人、老眼と白内障を一度に改善したい人 | 白内障はまだない人、角膜を削るレーシックに抵抗がある人、将来取り外す選択肢を残したい人 |
ライフスタイルとの相性 | 眼鏡にできるだけ頼らず生活したい人、白内障も気になる人 | まだ白内障はないが視力を改善したい人、治療後に調整や変更の余地を残したい人に向いている |
承認状況 | 日本でも広く実施されている | 老眼用の多焦点タイプはヨーロッパでは認可済みだが、日本では未承認。ただし、単焦点タイプの一部の度数(-3.0D~-20.0D)は承認されているが症例数はまだ少ない |
費用 | 多くが自由診療で高額になりやすい | 多くが自由診療で、導入間もないため費用や条件はクリニックによって異なる |
多焦点眼内レンズは、白内障手術で水晶体を取り除いたあとに入れる人工レンズです。遠くも近くも見やすくすることを目的としており、老眼と白内障を同時に改善できる可能性があります。
IPCLは、水晶体を残したまま目の中に追加でレンズを入れる方法です。角膜を削らずに視力を矯正でき、将来的に取り外しも可能という柔軟性があります。老眼矯正用の多焦点タイプも開発されていますが、日本では単焦点タイプの一部の度数しかまだ承認されていません。
現状では、老眼治療の主流は多焦点眼内レンズであり、IPCLは今後の選択肢として期待されています。違いを理解しておくと、納得して治療を選ぶためにも役立つでしょう。
八王子友愛眼科では、こうした治療法の違いや特徴を、患者さんの生活や将来の見え方まで考慮しながら丁寧にご説明しています。どの方法が自分に合うのか迷う方も、適応検査を通じて目の状態を確認し、中立的にメリットと注意点をお伝えしています。
IPCLについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

後悔しないために

老眼治療を検討するときは、効果や費用だけでなく、将来の見え方や生活への影響まで考えることが大切です。治療を選ぶ際に押さえておきたいポイントと、適応検査で分かることを整理しています。理解を深めることで、納得感をもって選択しやすくなるでしょう。
治療を選択するときに重視すべきこと
老眼治療は「視力が回復するかどうか」だけで判断せず、長く安心して過ごせるかを基準に考えると失敗が少なくなります。
特に大切なのは以下の観点です。
- 可逆性:やり直しや取り外しが可能か
- 安全性:合併症やリスクを最小限にできるか
- 将来性:白内障や老眼の進行にあわせて再手術や調整ができるか
また、今のライフスタイルだけでなく、加齢による変化も見据えた選択が必要です。治療法ごとの特性を理解し、医師と相談しながら自分に合う方法を見極めましょう。
適応検査で老眼の状態を調べよう
老眼治療を検討する際には、まず適応検査を受けて目の状態を確認することが欠かせません。八王子友愛眼科では、適応検査において老眼の程度や角膜の厚み、水晶体の状態などを調べて手術の可否を判断しています。
患者さんからは、
- 「老眼の進行具合や将来の見え方はどう説明しているのか」
- 「老眼が始まっている人がICLを希望した場合はどうなるのか」
といった質問をいただくこともあります。
実際には、40代以降の方や老眼が始まっている方の場合は「ICLの手術をしても手元は見えにくくなる可能性がある」ことを必ずお伝えします。ご理解いただいたうえでの治療が何より大事だからです。
また遠くの視力を完璧に合わせるよりも、度数を少し弱めて手元を見やすくする度数に調整する場合もあります。最終的には「どのような見え方を優先したいか」という患者さんの希望を大切にしています。
八王子友愛眼科では、将来の見え方や老眼の進行を見据えた丁寧な説明と調整を行い、納得いただける治療法をお伝えするよう心がけていますのでご安心ください。


よくある質問
老眼治療については、多くの方が似たような疑問や不安を抱えています。ここでは「レーシックと老眼の関係」や「ICLでの対応」「治療にかかる費用やリスク」など、よく寄せられる質問を中心にご紹介します。
レーシックすると老眼が早く進むって本当ですか?
老眼は、目の中のレンズ(水晶体)が年齢とともに固くなり、ピントを合わせる力が落ちることで起こります。これは自然な加齢現象であり、角膜を削るレーシックとは直接の関係がありません。
ただし、レーシックを受けたあとに「老眼が急に進んだ気がする」と感じる方もいます。これは手術によって遠くがよく見えるようになったことで、もともと進行していた老眼の症状(手元の見にくさ)に気づきやすくなるためです。
老眼は誰にでも訪れる自然な変化です。レーシックを検討するときも、老眼は避けられないことを理解したうえで判断することが大切です。
ICLで老眼も治せますか?
残念ながら、現在のICLは近視や乱視を矯正する手術であり、老眼そのものを治すことはできません。
老眼は目の中のレンズ(水晶体)が年齢とともに固くなり、ピントを合わせる力が落ちることで起こります。角膜や屈折の問題を補正するICLとは原因が異なるため、直接の改善はできないのです。
ただし、老眼矯正を目的としたIPCL(多焦点型の眼内レンズ)は海外で実用化が進んでおり、今後の選択肢として期待されています。日本においては一部の単焦点タイプに限り承認されていますが、実績数はまだ少ない状況です。当院ではIPCLの取り扱いがありますので、気になる方はご相談ください。
八王子友愛眼科では、適応検査を通じて一人ひとりの視力やライフスタイルに合った治療法をご提案しています。老眼を含めた見え方の悩みについては、まず適応検査で現在の状態を確認し、将来の見え方まで含めて相談いただくのがおすすめです。
老眼治療の費用はどのくらいかかりますか?
老眼治療の費用は方法によって大きく異なります。レーシックは比較的安価ですが、老眼改善には対応していません。老眼治療としては多焦点眼内レンズやIPCLが中心で、いずれも自由診療のため費用は高額です。
費用は保険適用の有無やクリニックごとに変わるため、正確な金額は各院に確認する必要があります。一般的な相場は以下のとおりです。
手術方法 | 費用相場(両眼) | 特徴 |
---|---|---|
レーシック | 20〜40万円程度 | 角膜を削って屈折を矯正する手術。比較的安価だが、老眼改善には対応していない |
多焦点眼内レンズ | 75〜90万円程度 | 濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入。遠くも近くもピントが合いやすく、老眼と白内障を同時に改善できる可能性がある |
IPCL | 45〜65万円程度(レンズの種類による) | 水晶体を残したままレンズを挿入する方法。角膜を削らないが、日本では一部の単焦点タイプを除き未承認で、導入実績も限られている |
八王子友愛眼科の費用についても公式サイトで案内していますので、最新の情報をご確認いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。
老眼治療のリスクはどの治療でもあるものですか?
はい。レーシック、ICL、多焦点眼内レンズなど、いずれも手術である以上、それぞれに特有のリスクがあります。
- レーシック:夜間に光がにじむ「ハロー」やまぶしさ「グレア」
- ICL:感染症や眼圧の上昇
- 多焦点眼内レンズ:光を分散させるため、見え方の質が変わることがある
大切なのは「リスクがあるかないか」ではなく、どの程度なら自分が受け入れられるかを理解することです。そのうえで医師と相談しながら、自分の生活や希望に合った治療法を選んでください。
無料診断で分かることは何ですか?
無料診断では、現在の視力・角膜の厚み・老眼の程度などを確認し、レーシックやICL、多焦点眼内レンズの適応があるかどうか判断できます。
八王子友愛眼科では、検査結果に加えて老眼の程度や将来の見え方についても丁寧に説明し、患者さんの希望を踏まえて一緒に治療法を検討します。
まとめ
レーシックは近視や乱視の矯正には有効ですが、老眼を直接改善する手術ではありません。老眼は水晶体の加齢による自然な変化で、誰にでも起こるものです。そのため老眼世代で視力改善を考える場合は、多焦点眼内レンズなど他の方法を検討するのが現実的となります。
どの治療にもメリットと注意点があるため、自分の生活や将来の見え方に合った選択をすることが大切です。
八王子友愛眼科では、無料の適応検査で視力や角膜の状態、老眼の程度を確認し、一人ひとりに合った選択肢をご案内しています。無理に特定の治療を勧めることはなく、ライフスタイルや希望を重視したご提案を行っています。
将来の見え方に不安がある方も、まずは適応診断で現状を知り、治療に向けた一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。ご予約はお電話またはLINEにて承っております。
八王子友愛眼科は、医療法人社団インフィニティメディカルが運営する3つのクリニックのひとつです。グループには、八王子友愛眼科・武蔵野友愛眼科・湘南友愛眼科の3院があります。 ICLの無料適応検査は、八王子友愛眼科に加えて湘南友愛眼科でも実施しています。ご希望のクリニックまで、お気軽にご連絡ください。 八王子友愛眼科 ※ICL無料適応検査 実施中 〒192-0081 東京都八王子市横山町22−3 メディカルタワー八王子 6F ▶Googleマップで開く 湘南友愛眼科 ※ICL無料適応検査 実施中 〒254-0012 神奈川県平塚市大神8丁目1−1 THE OUTLETS SHONAN HIRATSUKA 1214区画 ▶Googleマップで開く 武蔵野眼科 〒180-0006 東京都武蔵野市中町1丁目24−15 メディパーク中町 4F ▶Googleマップで開く |



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ICL指導医資格(STAAR Surgical認定)
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日本眼科手術学会所属
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日本白内障屈折矯正手術学会 所属
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日本眼科学会認定 眼科専門医
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杏林大学医学部眼科学教室非常勤講師
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日本涙道・涙液学会理事
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日本眼科学会プログラム委員
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南多摩眼科医会副会長
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